『悪魔の道具となった林檎の木』

悪魔の道具となった林檎の木』

かつて、人々は夢を見た。
手のひらに収まる小さな林檎の木――それは知恵を与え、遠くの声を運び、世界を近くに感じさせる不思議な電話だった。
誰もがそれを手に入れ、心躍らせた。「これで、何でも叶う」と。

だがその林檎の実は、誰にでももたらされた。
嘘つきも、鬼も、魔物も、それを手にした。
真実は歪み、声は罵りとなり、画面の向こうに潜む影が、人の心を侵していった。

今では誰も、それを「夢」とは呼ばない。
人々は囁く。「あれはもう、悪魔の道具だ」と。

嘘咤鬼
ハート♥エンジン
愛と平和のお話し